オプティカルサイジングの概要と、それがブランドにもたらすメリット

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ブランドデザイン

Font Legibility

Studio

Monotype Studio の最新リリース製品 Helvetica® Now には、極小、本文、見出しの 3 つのオプティカルサイズが用意されています。これは、用途に応じて最適な可読性を実現することを目的としています。オプティカルサイジングは、昔から書体デザイナが使ってきた技法のひとつですが、ブランドマネージャーやマーケター、そして一部のグラフィックデザイナにとっては、あまり馴染みがないかもしれません。ここでは、オプティカルサイジングとは何か、そしてブランドがどのようにそれを活用して、メッセージをよりクリアに、かつ効果的に届けられるのかをご紹介します。

「目を引く巨大広告の見出しから、多層的な情報デザインにおける極めて可読性の高い極小文字まで」

状況を考慮したデザイン

オプティカルサイジングとは、フォントが使われる場面や環境を考慮して、異なるバージョンのフォントをデザインする手法です。例えば、Helvetica は、巨大な屋外広告で見る場合と、スマートフォンの画面や本文テキストで読む場合とでは、受け取られ方がまったく異なります。オプティカルサイジングでは、そうした状況を考慮するとともに、文字の形状、スペーシング、カーニングの繊細なニュアンスが可読性とスタイルにどのような影響を与えるかも考慮します。従来の一般的な方法では、ある一つの最適なサイズでフォントを設計し、それが他のいかなるサイズにもある程度は適用できることを前提にしていました。しかし、そのような単一サイズ(シングルマスター)のフォント設計では、繊細なニュアンスは無視されがちです。

Helvetica Now optical sizes

Monotype Type のタイプディレクタ Charles Nix は、クラシックなセリフ体 Walbaum をデジタル時代に蘇らせた際に、こう語っています。「例えば、10 歳の子どもを人間の理想形としたと仮定しましょう──赤ちゃんを産む代わりに、10 歳児をそのまま縮小して赤ちゃんサイズにし、逆に拡大して大人のサイズにしたと想像してみてください。すなわち、赤ちゃんが 10 歳児のミニチュア版ではないのと同じように、5 ポイントの文字も 12 ポイントの文字を小さくしただけではないのです」

コンピュータが普及する前、書体デザイナたちは文字サイズごとにデザインを微調整し、全範囲でスタイルと可読性を保っていました。小さいサイズでは、可読性を向上させるために文字間隔を広くし、文字の開口部を大きくする必要がありました。逆に、大きいサイズでは、より大きなストロークのコントラストや、よりエレガントなディテールといった改良が効果的でした。しかし、コンピュータ用に活字がデジタル化され、シングルマスターのデザインが主流になると、ワンサイズですべてに対応するという手法が標準になりました」
 

普通とは何か?

今は、「一つのデザインですべてに対応する」という考え方が通用しないことがわかっています。フォントメーカーは、デザインの整合性を維持するために、サイズに応じて最適化したフォントを新たにデザインしたり、デジタル復刻したりしています。

Nix 氏によれば、オプティカルサイズをデザインするには、まず押さえておくべき重要なデザイン要素がある一方で、その手法には芸術と科学の両方の側面があると言います。

「文字の形状と文字間のスペースに対する芸術的な感性が必要です」と彼は言います。「しかし、改善は観察、仮説、実験を通じて行われます。それは、研究、試し刷り、そして改良を繰り返すこと。つまり標準的な反復デザインプロセスが重要なのです」

Nix 氏はいつもこの問いから始めます。「『普通』とは何でしょうか?オプティカルサイジングでフォントをデザインする際に、私は自問します。これは実存的な危機のように聞こえるかもしれませんが、ごく小さなサイズの文字をデザインする際は、『普通』の本文サイズの印象を与えることが求められます。そして、より大きいサイズの文字をデザインする際は、細部を間近で精査されてもいいように、『普通』を改良していく必要があります。普通とは何か?普通とは、デザインが達成しようとしている本質、その精神なのです」

�普通』とは何でしょうか?」Nix 氏は問いかけます。「それは、デザインが達成しようとしている本質、その精神なのです」

「60 年以上前に発表されたフォントファミリーである Helvetica を再考するにあたり、Monotype チームは、明瞭さ、シンプルさ、中立性を備えたフォントを実現するという、当初の意図に忠実であり続けました。その結果誕生したのが Helvetica Now です。これは現代のニーズに対応した Helvetica の改良版です。このフォントファミリーは「見出し」「本文」「極小」の 3 つのオプティカルサイズから成り、合計 48 種類のフォントを収録。高解像度と低解像度のどちらの環境にも適したデザインです。Nix 氏は次のように述べています。「目を引く巨大広告の見出しから、多層的な情報デザインにおける極めて可読性の高い極小文字まで、あらゆるデザイン用途で完璧に機能します」

見出しサイズ(14 pt 以上)は、Helvetica の繊細さを際立たせるように丁寧に描かれており、ヘッドラインを考慮した間隔になっています。標準の本文サイズ(8〜12 pt)は、長文の読みにくさに対応するために描かれ、スペーシングが設けられています。ストロークを太くし、コントラストを抑えて、スペーシングを広めにとることで、読みやすさを最大限に高めています。情報量の多い環境にも対応できる豊富なウエイトバリエーションも魅力です。

極小サイズ(3〜7 pt)は、非常に小さい植字や低解像度環境の文字向けにデザインされました。文字の形状は Helvetica の印象を維持するためにシンプルかつ強調されており、スペーシングを意図的に広くとっています。これは、極めて可読性の高い極小テキストに不可欠な要素です。
 

ブランドがオプティカルサイジングに注目すべき理由

オプティカルサイジングは、より優れたユーザー体験を生み出し、読みやすさと理解度を向上させ、多様性、アクセシビリティ、柔軟性をさらに高めてくれます。これにより、ブランドは視覚的アイデンティティを損なうことなく、あらゆるメディアで迅速かつ効果的にオーディエンスとコミュニケーションをとることができます。

ポスターからアプリ内の体験に至るまで、スタイルと可読性は常に重要です。ブランドメッセージは、熾烈な競争環境においては完璧に機能しなければなりません。可読性の欠如やスタイルの乱れは、それだけでブランドにとってマイナス評価につながります。オプティカルサイジングは単に機能性を高めるだけでなく、見た目も圧倒的に優れているのです。